中間ファイル

CAD(コンピュータ支援設計)の中間ファイルは、異なるCADシステム間でのデータの中間ファイルの確保のために使用されるファイル形式です。中間ファイルは、あるCADシステムから別のCADシステムへの移行をスムーズに行うための「橋渡し」として利用されます。ここでは、主な中間ファイルの形式について紹介します。
1.ステップ (.stp、.step) :
・3Dデータ交換のためのISO規格である「プロダクトモデルデータ交換の規格」の略称です。STEP形式は、3Dモデルの幾何学的な形状やトポロジー、寸法、色、物性データなどを含むことができます。
2.IGES (.igs、.iges) :
・「初期グラフィックス交換仕様」の略称で、3Dモデルのデータ交換のファイルです。IGESは、線形要素や面要素、立体要素、テキスト、注釈形式、寸法、属性などの堅実なエンティティをサポートしています。 。
3.パラソリッド (.x_t、.x_b) :
・3DモデリングカーネルであるParasolidに基づくファイル形式です。Parasolidは、多くのCAD、CAM、CAEアプリケーションで使用されており、3Dモデルの幾何学的な形状やトポロジーを表現するのに適しています。
これらの中間ファイルの形式は、3D CAD モデリングや設計のためのデータ交換や共有で使用します。CAD ソフトウェアが異なる場合でも、これらの形式を使用することで、異なるプラットフォーム間でのデータの互換性を確保することができます。

中間ファイル問題

CADデータの互換性の問題は、異なるCADソフトウェア間でのデータのやり取りや共有の際に発生することが多いです。以下は、CADデータの互換性に関連する一般的な問題とその解決策です:
1. ファイル形式の選択
・IGES(Initial Graphics Exchange Specification)、STEP(Standard for the Exchange of Product model data)、Parasolidなど、異なるフォーマットが存在します。
IGESは比較的古く、曲面データや寸法が失われることがあるため、注意が必要です。
STEPはCADデータの標準フォーマットとして広く使用され、モデルの仕様、寸法、幾何学データなどを含むことが可能です。
Parasolidは、特に曲面や細かな幾何学データの互換性を提供するため、高い精度が求められる場合に適しています。
2. 異なるCADソフトウェア間でのデータのやり取り
・異なるCADシステム間での変換では、曲面や寸法が正確に再現されないことがあります。特に、設計データが複雑である場合、変換過程でデータの一部が失われることがあります。
・データの互換性を確保するためのアプローチ:
ファイル形式の選定: 前述のフォーマットを使用して、可能な限り正確に変換を行います。
プラグインやツールの利用: 某CADソフトウェアは、他のCADシステムとデータ交換を支援するプラグインやツールを提供しています。
データの検証: 変換後のデータを再確認し、寸法や曲面が正確に再現されているかチェックする。
3. ファイルの圧縮と管理
・ファイルサイズが大きくなると、ファイル転送や共有が困難になる場合があります。データの圧縮ツールを使用してファイルサイズを軽減することが有効です。
・バージョン管理も重要で、互換性の問題を避けるためには、常に最新のファイルを使用することが推奨されます。
これらの対策を適用することで、CADデータの互換性問題を効果的に解決し、スムーズなデータ交換を実現できます。
1. トレランス(寸法公差・幾何公差)」の問題
CADシステムごとに
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カーネル(形状演算エンジン)
(例:Parasolid, ACIS, CATIA CGM など) -
データフォーマット
(例:STEP, IGES, JT, Parasolid X_T, CATPart など) -
公差の扱い方
が異なるため、モデルを変換すると「元の意図した精度」が失われることがあります。
2. 主なトレランス問題
(1) 幾何公差の消失・変換不良
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STEPやIGESに書き出すと、GD&T(Geometric Dimensioning and Tolerancing)情報が落ちる場合がある。
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PMI(Product Manufacturing Information)が非対応フォーマットだと3Dモデル上の公差記号が消える。
(2) 数値の丸め誤差
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あるCADでは小数点以下 0.0001 mm 単位まで扱えるが、別のCADは 0.001 mm 精度に制限される。
→ 微小な誤差が累積し、アセンブリ干渉やギャップを生む。
(3) トポロジー不一致
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サーフェスモデル → ソリッドモデル変換時に「ギャップ(隙間)」が生じる。
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これはCADごとのトレランス定義(edge tolerance, sewing tolerance)が違うため。
(4) アセンブリ拘束と基準系のズレ
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アセンブリ基準点・座標系がシステムごとに異なり、位置ズレが生じる。
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特に「±0.01 mm」の公差設定が、別CADでは「±0.1 mm」扱いになるなど。
3. 回避・対策方法
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中立フォーマットの適切な選択
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STEP AP242 → PMI保持可能
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JT → 軽量表示だが公差は一部保持可
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変換精度の統一
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両CADで「公差設定」を合わせる(例:0.001 mm に統一)
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受け渡し前にエクスポート時のトレランス確認
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ヒーリング処理(形状修復)
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受け取ったデータに対してギャップ閉じ処理(healing)や再トリムを実施。
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一部のCAD/検証ソフト(例えばGeomagic, SpaceClaim, Elysiumなど)が有効。
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GD&T情報の3Dモデル内保持
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2D図面を併用しないで「MBD(Model Based Definition)」を利用し、PMIをSTEP AP242対応で渡す。
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バリデーションツールの利用
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「送信側データ」と「受信側データ」を比較し、差分チェック(幾何・寸法・公差情報)。
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4. 実務上の注意点
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取引先やサプライチェーンでCADが統一されていない場合、契約時にフォーマットとトレランス精度を取り決めることが重要。
-
公差の違いで品質責任やPL法リスクに発展するケースもあるため、設計・製造間での検証プロセスを標準化すべき。
CAD間トレランス差異の整理
1. CADカーネルごとの特徴
| CAD システム |
概定の モデル精度 |
特徴的な 公差処理 |
|---|---|---|
| CATIA V5/V6 カーネルCGM |
約0.001 mm | 公差情報保持が強力、 STEP情報消失の恐れ |
| NX (Siemens) カーネルParasolid |
0.001 mm 0.0001 mm |
アセンブリ拘束精度強い STEP AP242対応精度持 |
| Creo (PTC) カーネルGranite |
0.001 mm | ヒーリング機能が強力 GD&T表記一部変換不可 |
| SolidWorks カーネルParasolid |
0.001 mm | Parasolid間は良好だが IGES変換でギャップ発生 |
| Autodesk Inventor カーネルShapeManager |
0.001 mm | ACIS系と互換性高いが Parasolid変換で面継ぎ 目ズレ発生 |
| Rhinoceros カーネルNURBS独自 |
0.001 mm | フリーフォームに強いが 公差情報は弱い、 STEP変換推奨 |
2. トレランス差異による問題点
| 問題カテゴリ | 具体例 | 原因 |
|---|---|---|
| 寸法公差消失 | ±0.01 mm の指定が消える | IGESや旧STEPではGD&T未対応 |
| 丸め誤差 | 0.0005 mm が 0.001 mm に繰上げ | CAD精度設定が異なる |
| 面ギャップ発生 | ソリッド化で隙間ができる | sewing tolerance の定義差 |
| 座標系ズレ | アセンブリ干渉が発生 | 座標基準点の仕様差 |
| PMI非互換 | 公差記号や注記が欠落 | CAD固有形式がSTEP非対応 |
3. 対策・ベストプラクティス
| 対策方法 | 内容 | 利点 |
|---|---|---|
| STEP AP242の利用 | PMI(3D公差情報)を保持可能 | 次世代の標準、MBDに適合 |
| 輸出入時の精度統一 | 両CADで tolerance = 0.001 mm に揃える | ギャップ最小化 |
| ヒーリングツール活用 | Elysium, SpaceClaim, Geomagic など | 自動でギャップ修復 |
| バリデーションチェック | 送信データと受信データを比較 | 差分・誤差を可視化 |
| 事前取り決め | サプライチェーン間で精度・フォーマット合意 | 品質責任を明確化 |
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