金型のリバースエンジニアリング

金型のリバースエンジニアリングついて

金型のリバースエンジニアリングとは?

既存の金型(射出成形・ダイカスト・プレス金型など)を デジタル化 → 解析 → 再設計・再製造 するプロセスのことです。

目的は以下のようなケースで非常に多いです:

  • 図面が紛失していて CAD データがない

  • 老朽化した金型の修理・補修のため

  • 海外製金型を国産ライン向けに最適化

  • 追加金型の複製

  • 材料変更・寸法変更に伴う金型の改修

  • 生産性向上(冷却最適化、摩耗部の最適化)

事例、金型のリバーエンジニアリング

金型リバースエンジニアリングの標準プロセス

① 3Dスキャン(点群取得)

金型のキャビティ・コアを 高精度スキャナー(ブルーライト/レーザー/CT) で計測。

ポイント:

  • 鏡面金型 → マットスプレーで反射を抑える

  • 深いキャビティ → CTスキャンが有効

  • 複雑形状 → マルチセンサー(三角測量+フォトグラメトリ)

取得結果:
→ 点群データ(Point Cloud)


② 点群 → ポリゴン化(メッシュ化)

ノイズ除去・穴埋め・統合・メッシュ軽量化を実施。

使用ソフト例:
Geomagic Wrap / PolyWorks / MeshLab など

ポイント:

  • スキャンの“うねり・反射ノイズ”除去

  • 欠損部は推定補完(AIベースの機能も増加中)

  • メッシュのトポロジー修正

  • 金型特有の“抜き勾配”部分の精査

結果:
→ STL / OBJ 形式のポリゴンデータ


③ CAD化(サーフェス再構築 / NURBS化)

元の金型形状を パラメトリックCAD で再構築。

主な技術:

  • サーフェスフィッティング(NURBS)

  • 自由曲面のパッチ割り

  • エッジライン抽出

  • 基準面・分割面の定義(パーティングライン)

金型CAD特有のポイント:

  • パーティングライン / パーティング面の再設計

  • ゲート・ランナー・冷却水路の形状認識

  • 抜き勾配確認

  • 金型摩耗の補正(公差再設定)

結果:
→ STEP / IGES / Parasolid などのCADデータ


④ 意匠精度と成形収縮を加味した補正

リバースで得た形状を そのまま使うとNG なのが金型の難しいところ。

成形条件によって収縮度合いが異なるため、
材料別の収縮率(PP / ABS / PC / PA / PBT / POM / ダイカストなど)を加味して補正。

補正内容:

  • 肉厚変化による収縮補正

  • リブのそり対策

  • ウェルドラインの配慮

  • 冷却効率による変形予測

最近は CAEシミュレーション(Moldflow / Sigmasoft) で事前解析も一般的。


⑤ 金型の再設計(モールドベース含む)

必要に応じて以下を最適化:

  • スライド・リフター構造

  • ゲート位置

  • ランナー取り回し

  • 冷却水路(コンフォーマル冷却も可能)

  • 強度補強、摩耗対策

  • メンテナンスがしやすい設計


⑥ 金型加工データ(CAM)生成

完成形のCADから CAM データを作成。

加工例:

  • CNC 3軸/5軸

  • 放電加工(EDM)

  • 研磨

  • 表面処理(鏡面、梨地、テクスチャ)


金型リバースエンジニアリングの注意点

✔ 成形品をスキャンする場合 → 製品収縮を逆算して金型形状を推定

金型がない場合、製品側から逆推定するため
“収縮率・そり・変形” の解析が不可欠。

✔ 光沢・鏡面金型はスキャンが難しい

マットスプレーは必須。

✔ 金型は“角のR”が重要

スキャンではエッジが甘くなるため、CAD側で意図的に補正。

✔ 金型は摩耗していることが多い

新品形状を再現したい場合は“摩耗逆補正”を実施。


使用される主なソフトウェア一覧

スキャン・点群処理

  • GOM / ATOS

  • Creaform HandySCAN

  • Hexagon Absolute Arm

  • Artec 3D

  • PolyWorks

リバースCAD(NURBS)

  • Geomagic Design X(業界標準)

  • Rhino + SubD / Grasshopper

  • Siemens NX Reverse Engineering

  • CATIA Digitized Shape Editor

金型設計

  • NX Mold Wizard

  • CATIA Mold Tooling

  • Creo Mold

  • VISI

  • SolidWorks Mold Tools


まとめ

金型リバースエンジニアリングは
点群 → ポリゴン → CAD → 金型再設計 → CAM
という一連のプロセスで進めます。

特に、
✔ 収縮補正
✔ パーティング面の再構築
✔ 冷却・ゲート最適化
✔ 摩耗補正
といった 金型特有の専門知識 が重要になります。

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会社概要

社名 アポロ株式会社
住所 〒440-0806 愛知県豊橋市八町通五丁目11番地
事業内容 リバースエンジニアリング、3Dスキャン、3Dデジタイジング、3D-CAD