3dスキャンデータ変換

3DスキャンデータをCADデータに変換、スキャンした形状データ(点群やメッシュ)を、設計・製造で使用できるパラメトリックなCADモデルに変換、金型製作などに利用できます。

1. 3Dスキャンデータの種類

3Dスキャナから出力されるデータには主に以下の形式があります:

  • 点群データ(.IGESなど)

  • ポリゴンメッシュ(.stl, .obj, など)

2. CAD化(リバースエンジニアリング)のプロセス

①スキャンデータのクリーニング

・ノイズ除去

・穴埋め

・不要な部分の削除

・使用ソフト例:Geomagic

② メッシュ編集・整形

・メッシュのリトポロジー(再構成)

・サーフェスのスムージングや整列

点群ノイズ除去からポリゴンメッシュ変換

③ CAD用サーフェスの作成

スキャンデータを元に、NURBSサーフェスやソリッドモデルを作成。

・使用ソフト例:Geomagic Design X、Rapidform XOR、SolidWorks(ScanTo3D)、Autodesk Fusion 360(メッシュ→BRep変換)

④ パラメトリックCADモデルへの変換

・CADソフトで寸法や拘束を定義して、設計意図を持ったモデルへ

・完全にパラメトリックにしたい場合は、手動でスケッチ・押し出しなどを再現する必要あり

ポリゴンデータからCADモデリング

3. 使用する主なソフトウェア

ソフト名 特徴
Geomagic Design X 高精度なリバースエンジニアリングに特化。メッシュからサーフェス・ソリッドへの変換が得意。
Autodesk Fusion 360 メッシュ編集機能を持ち、CADと統合できる。BRep変換あり。
Blender + CADソフト Blenderでメッシュ処理 → CADで再構築という流れ。オープンソース。
SolidWorks + ScanTo3D スキャンデータをSolidWorksに取り込んで、CAD化できるアドイン。

4. 注意点・課題

  • 精度の確保(スキャン精度+モデリング精度)

  • 曲面が多い形状は手作業のモデリングが必要

  • 点群データからのCAD化は中間でメッシュ化が必要

  • 凹凸が複雑な場合、NURBSでの再現が困難

 5. よくある用途

  • 製品のリバースエンジニアリング

  • 金型・部品の複製

  • 遺産・文化財のデジタル化と復元

  • フィッティングパーツの設計(現物に合わせる)

 6. リバースエンジニアリングにおける CADモデリングの問題点

主に以下のような課題が挙げられます。

スキャンデータからの変換精度

・点群データやポリゴンメッシュは、CADで用いるパラメトリック形状(NURBS曲面など)とはデータ構造が異なる。

・そのため 直線や円弧が“荒れた多角形”として認識される など、幾何学的精度が失われることが多い。

・特に機械部品の場合、JISやISOなど規格に基づく寸法精度が要求されるが、スキャンから直接CAD化したデータでは 許容誤差(トレランス)を満たさない ことがある。

フィレットや面取りの再現

・元の部品には意図的に設計されたフィレットや面取りが存在するが、スキャンデータでは 単なる丸みや欠け として捉えられることが多い。

・その結果、設計意図を反映したCADモデリングに落とし込むのが困難になる。

データ量と処理負荷

  • 高精度スキャンでは 点群データが数百万〜数千万点 にもなり、ポリゴン化するとさらに膨大なデータ量になる。

  • このままCAD化しようとすると 計算が重く、モデリングソフトが不安定になる

  • 必要に応じてノイズ除去やデータ簡略化を行うが、その過程で形状の正確さが犠牲になる。

設計意図の欠如

・リバースエンジニアリングは「形状の再現」はできても、「なぜその寸法になっているのか」という 設計意図や機能要件 は推測できない。

・結果として、部品の公差、強度設計、安全基準(PL法対応など)が欠落したCADモデルになりがち。

異なるCADシステム間での互換性

・変換されたCADデータはソフトによって扱える形式が異なり、 STEP, IGES, STL などの中間フォーマットで精度が落ちる

・特にフィーチャーベースのCAD(穴、押し出し、リブなどの情報を持つ)に変換するのが難しい。

コストと工数

高精度で再現しようとすると、

・高価な産業用CTスキャンやレーザースキャナの使用

・専門技術者による曲面再構築作業が必要となり、結果的に 時間もコストも大きくなる


👉 まとめると、リバースエンジニアリングにおけるCADモデリングは「点群 → ポリゴン → CAD曲面」という変換の過程で、精度・設計意図・データ互換性 が大きな課題となります。