CAD化 作業フロー|現物・3Dスキャンデータを設計で使えるCADモデルへ

CAD化とは、現物部品や3Dスキャンデータ、図面のない製品形状をもとに、設計・製造・検査で活用できるCADデータへ再構築する作業です。単に形状をなぞるだけではなく、基準面・中心軸・寸法関係・R形状・抜き勾配などを整理し、目的に合わせた使いやすいデータに仕上げることが重要です。
特にリバースエンジニアリングでは、点群データやメッシュデータをそのままCADに変換しても、面が細かく分断されたり、設計意図が反映されなかったりする場合があります。そのため、CAD化の作業フローでは、形状の測定からデータ処理、面構成、ソリッド化、検証までを段階的に進めます。
CAD化の基本的な作業フロー
1. 現物確認・目的の整理
まず、CAD化する対象物を確認し、使用目的を明確にします。
製品の再製作、金型修正、部品の復元、検査用データ作成、3Dプリント用データ作成など、目的によって必要な精度やCADモデルの作り方が変わります。
たとえば、外観確認用であればメッシュデータでも対応できる場合がありますが、加工や設計変更に使用する場合は、寸法管理が可能なソリッドモデルやサーフェスモデルが必要になります。
2. 3Dスキャン・寸法測定
対象物の形状を取得するために、3Dスキャンや接触式測定、ノギス・マイクロメータなどによる寸法確認を行います。
複雑な自由曲面や手作業で測りにくい形状は、3Dスキャナーによる点群取得が有効です。
光沢のある金属部品や黒色樹脂部品では、反射や吸光によってデータが欠けることがあるため、必要に応じてスキャン条件を調整します。精度の高いCAD化を行うためには、測定段階でのデータ品質が非常に重要です。
3. 点群データの整理
3Dスキャンで取得した点群データには、不要なノイズや重複データが含まれることがあります。
そのため、孤立点の除去、位置合わせ、不要部分の削除、複数方向から取得したデータの合成などを行います。
この工程でデータをきれいに整えておくことで、後工程のメッシュ化やCAD面作成の精度が安定します。点群の密度が不足している部分や欠けている部分がある場合は、再スキャンや補正作業を検討します。
4. メッシュデータの作成・修正
整理した点群データを三角形ポリゴンの集合であるメッシュデータに変換します。
メッシュ化後は、穴埋め、ノイズ除去、面の平滑化、エッジの整理、不要な凹凸の修正などを行います。
この段階のデータは、形状確認や3Dプリントには利用しやすい一方で、設計変更や加工用データとしては扱いにくい場合があります。そこで、メッシュデータを基準にして、CAD用の面やソリッド形状を再構築していきます。
5. 基準面・基準軸の設定
CAD化で重要なのが、基準となる面や軸を正しく設定することです。
平面、円筒、穴位置、中心線、対称面などを整理し、部品本来の設計意図に近い構成を考えます。
スキャンデータは現物の摩耗、変形、傷、加工誤差などを含んでいるため、すべてをそのまま再現すると使いにくいCADモデルになることがあります。必要に応じて、摩耗部分を補正したり、左右対称形状を整えたりしながら、設計に使える形へ再構築します。
6. サーフェス・ソリッドモデルの作成
メッシュデータを参考に、CAD上でサーフェス面やソリッド形状を作成します。
自由曲面が多い製品ではNURBSサーフェスを用いて滑らかな面を作成し、機械部品では平面・円筒・円錐・フィレットなどの幾何形状を組み合わせてモデル化します。
この工程では、単なる自動変換ではなく、形状の役割を理解したモデリングが求められます。取付面、摺動面、合わせ面、穴位置、R形状などを適切に整理することで、後工程で扱いやすいCADデータになります。
7. 寸法調整・設計意図の反映
CAD化したモデルに対して、寸法の調整や設計意図の反映を行います。
穴径、ピッチ、板厚、R寸法、角度、抜き勾配、中心距離などを確認し、必要に応じて数値的に整えます。
特に金型部品や機械部品では、現物形状をそのまま再現するだけでなく、加工しやすさ、組付けやすさ、強度、機能面を考慮したCAD化が重要です。設計変更を前提とする場合は、パラメトリックモデルとして作成することで、後から寸法変更しやすいデータにできます。
8. 偏差確認・品質チェック
作成したCADモデルと元のスキャンデータを重ね合わせ、形状の差を確認します。
偏差解析を行うことで、どの部分がどの程度ずれているかを色分けで確認できます。
この検証により、必要な精度を満たしているか、形状の抜けや面の崩れがないか、重要部分にズレがないかをチェックします。用途に応じて、全体形状を重視する場合と、特定の取付部・合わせ部・機能面を重点的に確認する場合があります。
9. データ出力・納品
最終的なCADデータは、用途に合わせた形式で出力します。
代表的な形式には、STEP、IGES、Parasolid、STL、OBJなどがあります。
加工や設計変更に使用する場合はSTEPやParasolid、3Dプリントや形状確認にはSTL、自由曲面の受け渡しにはIGESが使われることがあります。使用するCADソフトや加工設備に合わせて、最適なデータ形式を選定します。
CAD化で重要なポイント
CAD化では、見た目の形状だけでなく「どのように使うデータか」を考えることが大切です。
同じ部品でも、検査用、加工用、設計変更用、保管用では、必要なデータ構成が異なります。
特にリバースエンジニアリングでは、現物の形状を正確に読み取りながら、摩耗や変形をどこまで反映するか、設計上の基準をどこに置くかを判断する必要があります。この判断によって、完成するCADデータの使いやすさが大きく変わります。
CAD化のメリット
CAD化を行うことで、図面のない部品や古い製品をデジタルデータとして保存できます。
また、既存部品の改良、金型の修正、補修部品の製作、品質検査、3Dプリント、CAE解析など、さまざまな用途に活用できます。
現物しか残っていない部品でも、CADデータ化することで再製作や設計変更がしやすくなり、製造現場の技術継承や保守対応にも役立ちます。
まとめ
CAD化の作業フローは、現物確認、3Dスキャン、点群処理、メッシュ修正、基準設定、サーフェス・ソリッド作成、寸法調整、偏差確認、データ出力という流れで進みます。
高品質なCAD化を行うためには、単なる自動変換ではなく、対象物の機能や用途を理解したモデリングが欠かせません。現物形状を正確に把握し、設計や製造で活用しやすいデータへ再構築することで、リバースエンジニアリングの価値を最大限に引き出すことができます。
📌 補足:自動 vs 手動CAD化の違い
| 項目 | 自動(スキャン→ソリッド) | 手動(CAD再構築) |
| 精度 | スキャン形状そのまま | 寸法に基づき正確 |
| 作業効率 | 早い | 時間がかかる |
| 設計意図の再利用 | 難しい | 可能 |
| 加工適性 | △(誤差あり) | ◎ |
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